歯周病は細菌の感染によって引き起こされる病気です。
歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が行き届いていないと、そこに多くの細菌が停滞し歯肉の辺縁が炎症を起こして赤くなったり、腫れたりします。(痛みはほとんどの場合ありません。)
そして進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の境目が深くなり、歯を支える土台(歯槽骨)が溶けて歯が動くようになり、最後には抜歯しなければなりません。
今すぐできる!歯周病チェックリスト
もしかして歯周病かもしれない?
そう思ったらまずは下記のチェックリストで自己診断をしてみましょう。
合計値が高いほど歯周病の疑いが強まります。
No. | チェック内容 | 点数 |
---|---|---|
1 | 朝起きた時、口の中がネバネバする。 | 1 |
2 | 口臭が気になる。 | 1 |
3 | 歯磨きは1分以内、1日1回未満である。 | 1 |
4 | たばこを吸う。 | 1 |
5 | ここ1年歯科に行っていない。 | 1 |
6 | ストレスを溜め込んでいる。 | 1 |
7 | 糖尿病にかかっている、その疑いがある。 | 1 |
8 | 歯が大きく(長く)なった気がする。 | 1 |
9 | 食べ物が詰まりやすくなった。(歯と歯の間に隙間ができた) | 1 |
10 | 歯ぐきを押すと白い膿が出る。 | 1 |
11 | 歯磨きをすると血が出るときがある。 | 1 |
12 | 歯ぐきが赤く腫れている。 | 1 |
13 | 指で押すとグラグラ動く歯がある。 | 1 |
点数別判定結果
0点 | 現在のところは歯周病の疑いはないようです。ただし、歯周病にかかるリスクが0という訳ではありません。定期的に歯医者さんに通って予防をつづけていきましょう。 |
1~4点 | 軽度の歯周病になっているか、なりやすい状態です。丁寧な歯磨きとデンタルケアを心がけることで改善を目指しましょう。 |
5~9点 | 歯周病にかかっている可能性が高いです。できるだけ早く歯医者さんに行くようにしましょう。 もちろん、デンタルケアが不十分な場合は改善する必要もあります。 |
10点以上 | かなり進行した歯周病である可能性があります。早急に歯医者さんに行かなければ取り返しのつかないことになるかもしれません! |
歯周病の進行の仕方
歯肉炎
第一段階(P1)
(Periodontitis=歯周病を略して、P1と呼ばれます。以下同様) 歯を磨いたときに時々出血があったり、歯ぐきに赤いところが見られたら歯周病の第一段階です。
念入りな歯磨きなど、プラークコントロールを意識することにより健康な状態へ回復することが出来ます。
第二段階(P2)
もう少し進行すると、歯を磨くたびに出血するようになります。
歯が浮いているような感じや、歯ぐきにかゆみを感じる人もいます。
この段階になったらまず歯医者さんに行きましょう。
歯磨きでは取れない、歯周ポケットの中の歯石を 取らなければいけません。
歯周病
第三段階(P3)
歯ぐきが赤紫色に見えてきたら、いよいよ歯周病が進行してきた証拠です。
かなり大きな歯石がついていますので、細菌も大量に潜んでいます。
また、白血球が細菌を撃退するために戦いますので、その死骸が膿となって血と一緒に出てきます。
そのため、口臭もかなりきつくなります。
第四段階(P4)
歯が抜け落ちる前の状態で、歯ぐきは紫色に変色しています。
これは細胞が壊死しているのです。
歯ぐきが下がりきって、歯がとても長く見えるようになります。
この段階まで進むと、正常な歯に戻すことは不可能です。
歯周病を予防するためには?
セルフケア
歯周病の原因となる歯垢(プラーク)を、歯磨きで取り除きます。
歯周病や虫歯の原因となる歯垢(プラーク)は、生きた細菌の塊です。
歯とほぼ同じ乳白色で水に溶けにくく、歯の表面に粘着しているため、うがいをするだけでは取り除くことはできません。
しっかり歯磨きをして、この歯垢(プラーク)を取り除くことが大切です。
歯磨きする上で大切なこと
食べたらすぐに歯を磨きましょう。
食後は虫歯になりやすい状態が20分以上続きます。
食べたら歯を磨く習慣をつけましょう。
睡眠中は唾液の分泌が減り、口腔は細菌が繁殖しやすい状態になります。
寝る前は特にていねいに歯を磨きましょう。
生活習慣の改善
歯周病ケアには、普段の生活習慣の見直しが大切
歯周病は生活習慣病ともいわれています。
それは、毎日の生活習慣が歯周病の発症や進行に大きく影響することが分かっているからです。
歯周病ケアのためには生活習慣をしっかりと見直すことも大切です。
生活習慣を見直しましょう
食習慣
- 栄養バランスの取れた、規則正しい食生活を意識しま しょう
- 糖分の多い食品を摂り過ぎるのはやめましょう
- 歯周組織の抵抗力をつける食品を摂取しましょう(たんぱく質、カルシウム、鉄分、ビタミンA・Cなど)
喫煙
タバコを吸うと血行が悪くなり、歯周病を悪化させる原因になります。
喫煙習慣を見直し、禁煙を心がけましょう。
ストレス
精神的ストレスは、体の抵抗力低下や生活習慣の変化を招き、歯周病ケアにも影響を及ぼします。
普段からストレスをためないよう、ためてもストレス発散できるようにすることが大切です。
不規則な生活(睡眠不足)
睡眠不足は、体の抵抗力低下や生活習慣の変化を招き、歯周病ケアにも影響を及ぼします。
快眠のために、自分にとって最適な睡眠のリズムや寝具を探しましょう。
不規則な生活(運動不足)
歯周病とメタボリックシンドロームには、深い関わりがあるということが近年の研究で分かってきました。
適度な運動は体の抵抗力を高めてくれるため、間接的な歯周病予防につながります。
定期プロフェッショナルケア
毎日しっかりとホームケアをしている人でも、磨き残しを完全になくすことはできません。
磨き残された古い歯垢や歯石はもう歯ブラシ等で除去することはできないからです。
そこで、ホームケアでは行き届かない部分を、「プロフェッショナルケア」で補うことが必要です。
定期的に歯科医院に行って、専門の器具、機械、薬剤等をつかって、磨き残しをクリーニングしてもらいましょう。
歯科衛生士さんに「ブラッシング指導」をしてもらえば、ホームケアの質を高めることもできます。
口腔内の状態に合わせて、年に2回以上、定期的にプロフェッショナルケアを受けることが理想的です。
それでは、プロフェショナルケアではどんなことが行われるのかを見てみましょう。
1.PMTC
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯科衛生士によって専門の機械を使い、歯の隅々までクリーニングすることを言います。
毎日のブラッシングでは落とせない古い歯垢、歯石、歯の表面の細かい汚れ、細菌の膜を取り除き、歯の表面をツルツルにすることでプラークをつきにくくします。
クリーニング後のお口の中はさっぱりとし、きれいになった口内を実感できます。
2.歯周ポケットのクリーニング
歯と歯ぐきの間の歯周ポケットには、歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れがたまり、口臭や歯周病の原因になります。
歯周ポケットの状態を検査し、お手入れの行き届かない歯周ポケットの中をしっかりとクリーニングすることで、口臭や歯周病を予防し、お口の健康を保つことができます。
定期検診は、たとえ歯の病気にかかってしまっても、早期に治療ができるよい機会です。
歯は、治療を重ねるたびにダメージを受けて長持ちしなくなりますが、定期検診で早期発見・早期治療が実現することでダメージが少なくなり、健康な歯を残せる可能性が広がるのです。
また、定期検診を受けているか・受けていないかによって、患者さんの歯の寿命に差がつきます。
一度治療した歯は再発も多いもの。たとえお口に異常を感じなくても積極的に定期検診を受けましょう。
セルフケアを正しく行い、 プロフェッショナルケアを 組み合わせることで お口の健康を保ちましょう。
歯周病と心臓疾患・脳血管疾患
狭心症・心筋梗塞
動脈硬化により心筋に血液を送る血管が狭くなったり、ふさがってしまい心筋に血液供給がなくなり死に至ることもある病気です。
動脈硬化は、不適切な食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされていましたが、別の因子として歯周病原因菌などの細菌感染がクローズアップされてきました。
歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が出来血液の通り道は細くなります。
プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まります。
脳梗塞
脳の血管のプラークが 詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークが飛んで来て脳血管が詰まる病気です。
歯周病の人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になり易いと言われています。
血圧、コレステロール、中性脂肪が高めの方は、動脈疾患予防のためにも歯周病の予防や治療は、より重要となります。
歯周病と糖尿病
日本人の糖尿病
強く疑われる人=約890万人
可能性を否定できない人=約1,320万人
合わせると2,210万人いると推定されます。
歯周病は糖尿病の合併症の一つ
歯周病は以前から、糖尿病の合併症の一つと言われてきました。
実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。
さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。
つまり、歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。
歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきています。
全身の健康に歯科が出来ること
歯肉の炎症が全身に多くの影響を与えることは昨今の研究で明らかになってきています。
歯周病も糖尿病も生活習慣病ですから互いに深い関係があって不思議ではありません。
毎日の食生活を含めた生活習慣を見直し、歯周病を予防する事が全身の生活習慣病を予防することにつながります。
歯医者は口腔内の変化をみる事のできるプロです。
口腔ケアも自分一人できちんと行うのは難しいと言われています。 半年に一度は歯科医を受診し、生活習慣も含め口腔内のケアを受けるようにしてください。
歯周病と妊娠
妊娠性歯肉炎
一般に妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなるといわれています。
これには女性ホルモンが大きく関わってくるといわれており、特にエストロゲンという女性ホルモンがある特定の歯周病原細菌の増殖を促すこと、また、歯肉を形作る細胞がエストロゲンの標的となることが知られています。
これらのホルモンは妊娠終期には月経時の10~30倍になるといわれており、このため妊娠中期から後期にかけて妊娠性歯肉炎が起こりやすくなるのです。
ただ、基本的には歯垢が残存しない清潔な口の中では起こらないか、起こっても軽度ですみますので、妊娠中は特に気をつけてプラークコントロールを行いましょう。
油断すると出産後に本格的な歯周病に移行する場合もありますので、注意が必要です。
歯周病と低体重児早産
近年、さまざまな歯周病の全身への関与がわかってきました。 なかでも妊娠している女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。
これは口の中の歯周病細菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかといわれています。 その危険率は実に7倍にものぼるといわれ、タバコやアルコール、高齢出産などよりもはるかに高い数字なのです。
歯周病は治療可能なだけでなく、予防も十分可能な疾患です。 生まれてくる元気な赤ちゃんのために、確実な歯周病予防を行いましょう。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎です。 肺や気管は、咳をすることで異物が入らないように守ることができます。
しかし、高齢になるとこれらの機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入ることがあります。
その結果、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
特に、脳血管障害の見られる高齢者に多くみられます。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは、歯周病菌であると言われており、誤嚥性肺炎の予防には歯周病のコントロールが重要になります。
骨粗鬆症
骨粗鬆症とは
骨粗鬆症は、全身の骨強度が低下し、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気で、日本では推定約1,000万人以上いると言われています。
そして、その約90%が女性です。
骨粗鬆症の中でも閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下により、骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲン分泌の低下により発症します。
歯周病と骨粗鬆症
閉経後骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として最も重要と考えられているのが、エストロゲンの欠乏です。
エストロゲンの分泌が少なくなると、全身の骨がもろくなるとともに、歯を支える歯槽骨ももろくなります。
また、歯周ポケット内では、炎症を引き起こす物質が作られ、歯周炎の進行が加速されると考えられています。 多くの研究で、骨粗鬆症と歯の喪失とは関連性があると報告されています。
したがって、閉経後の女性は、たとえ歯周炎がなくても、エストロゲンの減少により、歯周病にかかりやすく、広がりやすい状態にあると言えます。
また、骨粗鬆症の薬としてよく用いられるビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)というのがあり、これを服用している方が抜歯などをした場合、周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。
歯周病でぐらぐらしているから自分で抜くなどということは絶対に行わないようにしてください。
歯周病とメタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪蓄積を臍部の内臓脂肪面積100cm2以上と定義、ウエスト周囲径が男性で85㎝、女性で90㎝以上を基盤とし、さらに、(1)血中脂質異常、(2)高血圧、(3)高血糖の3項目のうち2つ以上に異常所見が見られる病態です。
大きな特徴は内臓脂肪を基盤とすることであり、高血圧、高血糖、脂質異常の値がさほど高くなくても脳卒中や心筋梗塞の危険性が高くなります。
歯周病とメタボリックシンドローム
詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出されるLPS(歯周病菌由来の毒素)やTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。
また、重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスク亢進と密接に関与すると考えられています。
さらには、この慢性炎症が個体の老化を促進するという論文も出てきました。
このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。
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